OB INTERVIEW
OBインタビュー
1993年(平成5年)卒業
山梨大学
クリーンエネルギー研究センター
准教授
葛目 陽義
1974年生まれ。1988年中学2年時に帰国子女枠で攻玉社に編入。1994年 東京大学教養学部理科I類入学。1999年同大学理学部化学科を卒業。2001年東京大学院理学系研究科化学専攻(修士)修了。2004年英国リバプール大学大学院化学専攻(Ph.D.)修了。同年スペイン・アリカンテ大学で研究員として活躍。帰国後も慶応義塾大学、東北大学、スイス・ベルン大学、東京工業大学においてクリーンエネルギーの研究活動を続け現在に至る。
攻玉社の教えは、
教育者である今の自分の
倫理・理念の基礎になっている。
帰国子女枠で攻玉社に入学されたそうですね
もともと兄が高校1年生まで攻玉社に在学していました。その後、親の仕事でインドに引っ越しましたが、帰国が決まった時に調べたところ、帰国子女の編入試験が攻玉社にあることを知りました。兄の担任だった高橋隆也先生や、吹奏楽部の担当だった田中先生など、すばらしい先生方がいらっしゃることから、私もぜひ攻玉社に入学したいと思い受験したのです。
攻玉社に入って感じたのは、制服などの規定はあるものの、基本的に非常に自由な雰囲気だったことです。先生方や授業も個性的でした。長恨歌の全暗記テストで100個の空欄を埋める漢文、生徒の実力に応じた自作プリントのみで講義する数学、文章問題を深読みさせる現代文、教科書の記述の順番とは関係なく進める日本史…。時折、校長先生が授業を巡回して教室の窓から覗き込んでいたのも良く覚えています(笑)。
在学中に印象に残っていることは何ですか
二つあります。ひとつは、授業の前に行った黙想です。当時の岡本武男校長先生が自ら教室にいらして、黙想をやる意味や腹式呼吸の方法を教えてくださいました。目をつむって息を整え、鼻で吸って口で吐く。それを3~4回繰り返すと、すごく落ちつくんです。緊張が解けて、集中力が高まるので、大学入試の時などはとても役に立ちました。岡本校長の「黙想!」という大きな掛け声は今も耳に残っています。
二つ目は、高校2~3年生の時、授業のあとに同級生同士で講義をしたことです。その科目が得意な生徒が先生役になって、同級生に講義をするわけです。私は数学が得意だったので、数学の苦手な同級生に講義をする。友達同士ですから、わからないところは気兼ねなく質問できるし、教える方も100%理解していないと教えられないんです。中途半端に教えると「お前、何を言ってるのかわからないぞ!」と突っ込まれる(笑)。勉強は大学受験を前にやらざるを得ないのですが、勉強することを同級生同士で楽しんでいましたね。講義形式の勉強でお互いに切磋琢磨した思い出は、攻玉社が進学校へ変化する潮流の下地だったのかもしれません。
攻玉社ではどのような学生生活を過ごしましたか
部活動はバレーボール部とインターアクトクラブに所属していました。インターアクトクラブでは、熱帯雨林の伐採や地球温暖化など、環境問題について学びました。今では当たり前のようにSDGsを勉強しますが、30年以上前の当時は環境問題といえば光化学スモッグくらいで、一般にはあまり知られていませんでした。同じ地区のロータリークラブの高校生と環境問題について議論したことは、今の研究モチベーションの起源だと思っています。国際交流にも参加して、多くの留学生と意見交換した経験は、のちの海外留学のきっかけにもなりました。
輝玉祭(学園祭)実行委員の総務部門長を務めたことも忘れられません。「最高の輝玉祭にすること」を目指して各部門長と協議折衝したり、近隣住民の方々への挨拶、学内外の清掃作業、夜居残り禁止などを徹底したことで一切の苦情が来なかったことなどは大変いい思い出です。下級生や上級生に対して準備作業の配分や相談ごとの対応などをしたことは、人間を通した社会システムの構図を疑似体験したような経験でした。
最後に、在校生や受験生へメッセージを
攻玉社の校訓である「誠意・礼譲・質実剛健」は、まさに社会に出るための人格形成における基礎となる教えでだと思います。何事にも誠意をもって取り組み、だれに対しても礼譲を忘れることなく、自分自身は質実剛健を基とする。現在の私は大学で教鞭をとっていますが、攻玉社の教えは、教育者としての倫理・理念の基礎となっています。
自分がやりたいことは何か、将来なりたいことは何かを考え、夢を持ち続けることが大切だと思います。そのために、つねに挑戦する心を持ち続けていただきたい。攻玉社の6年間で自分自身の基礎をしっかり作り上げて、それを土台として次に飛躍してもらいたいと思います。長い人生、失敗はいくらでもあります。しかし、その失敗から何かを学び取れば、それは成功の一部になります。みなさんの航海は続きます。つねに上を向いて、夢を追い続けてください。
社会で活躍する先輩が語る
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